卒研生向け論文執筆Tips

このページは卒研指導の中で気づいた点などをまとめたものです. 研究室の方針などによっては賛否が分かれるものもありますが, 卒論作成の参考にしていただければと思います.

表記

図と表にはキャプションをつける
本文中の図や表には,通し番号と,その図や表の意味を示すタイトル (これをキャプションという)をつける.一般に,図のキャプションはその図の下, 表の場合は表の上につける.基本的に,図や表を載せた場合には,その説明を本文中で すること(「図3に○○を示す」「△△と□□の関係を表4に示す」など).
数字やアルファベットは基本的に半角を使う
一般的に数字やアルファベットは全角ではなく半角を用いる (例外的に,レイアウトの関係等で,本文中では半角を使わないようにとの 指示が出されることもあるのでその時には指示に従う.指示がなければ基本的には 半角を使うと思って良い).
文章表現を統一する
略語の説明は最初に出る場所でする
例えば「GA(Genetic Aigorithm)」のように,略語に説明を加えるときは, その略語が最初に出てきた場所に加える.概要(アブストラクト)と本文とで 同じ略語を使う場合には,それぞれの最初に出てきたところで加える (アブストラクトと本文は扱われ方が違うことが多く,アブストラクトのみを読む 場合と,本文のみを読む場合の両方が有り得るため,それぞれの最初に 書いておくと良い).
文献引用と記号の順序
他の文献を参照するときには,引用記号([1][2]など)を付け, 巻末に参考文献を載せる. 文献引用の記号に数字を使う場合には,基本的には番号の小さい順 に,本文中に登場するようにする(いきなり[8]とか[13]とか出てこないように). 巻末の参考文献として情報を書くときにも,この順番で並べる. 人名を使う場合([Takahashi2003][Odaka2004]など)には,いくつかの流儀があり, 代表的なものに「年代順」と「アルファベット順」がある. 執筆要綱があるなら,その指示に合わせること.
複数の文献を1箇所で参照する場合の表記方法の流儀としては, [3][4]などのように並べる方法と,[3,4]のようにカンマで区切って表記する方法が あり,どちらのケースも良く見るのでこれも執筆要綱などの指示に従うこと.
1つの参考文献の情報は「著者名」「論文タイトル」「掲載誌名」「掲載号数」 「掲載ページ」「発行年」の順に表記するのが一般的.掲載ページは例えば 13ページから21ページにかけて掲載されているなら「pp.13-21」のように記述する. 発行年は西暦をカッコで囲んで「(2003)」のように記述することも多い. もちろん,他の表記方法が指定される場合もあるので執筆要綱等で確認すること.
数値の扱い
数字の有効桁数に気をつけること.計算機で値を求めると小数部の桁がかなり多く 表示されるが,全部の桁を書いても意味がない.扱っているデータの特徴から 考えて適切な有効桁数で表記すること.
また,一部の表計算ソフトでは,末端の桁がゼロの場合に桁数を減らす場合が ある(例えば,小数点以下第2位まで有効な場合に,1.30と入力しても,1.3のように 最後のゼロが省略されて出力されるなど). 有効数字を明確に示すという意味では,このような省略は好ましくないため, 適切な桁数で表示されるように(表計算ソフトの設定を変更するなどの対策を)する 必要がある.
データの手入力はできるだけ避ける.コンピュータ等で機械的に処理した場合と, 人が結果を見て手で入力した場合とでは,後者の方が誤りが混入する可能性が高い. もちろん,手で入力しなければならない場合もあるが,そのときには,入力誤りが あったときに修正・検証をしやすくするために,コンピュータの出力を別ファイルへ 記録するなどの対策をしておくとよい.

文章表現

ひとつの文で,表現する内容は基本的には1つ
ひとつの文に2つも3つも質の違う内容を詰め込むと,何を言いたい文なのか わからなくなる.表現したい内容が1つあるなら,それを1つの文で表現する. 特に,1文の長さがとても長い場合には,2つ以上の意味を1文で表現してしまおうと している場合が多い.何を表現したいのかを意識して,必要に応じて文を分割すべき.
ひとつの段落にはひとつの意図を持たせる
いいかげんに段落の区切りを作らない.文章全体の構成の中で何を意図した 段落なのかを考えて,ひとかたまりとなる部分を1つの段落にする.
文末表現を工夫して文章の意図を明確に区別する
なんでもかんでも「○○である」と断定的に表現していいわけではない. 「一般に○○であるといわれている」「彼らは○○であると主張している」 「調査の結果○○であることがわかった」「今回の研究では○○であると仮定する」 「我々は○○であると考えている」など,できるだけ正確に立場を表現する. 特に,自分の意見や主張を表現するときと,事実を表現するときとでは, その文末表現を明確に区別すること (混同すると,嘘を書いていると誤解されることもある).
ダイレクトな表現を使う
まわりくどい表現は避ける.意味なく長い表現を使うと非常に読みにくくなる. 例えば「調査の行動を行なった」は「調査した」で良い.「観察するという行動を 行なうのは不可能なことである」は,「観察できない」「観察することはできない」 「観察不可能である」等で良い.ただし,立場を示す表現は必要(例えば, 「本稿では観察不可能であると仮定する」のような文の中の,立場を示す表現は 外せないので安易に短くはしないこと).文章の構成も同様. 周辺の話を遠まわしに書くのではなく,本質的な主張を直接していくように心がける.
全てを列挙した場合と複数の中の一例を示す場合とで表現を区別する
A,Bの2つの要素がある場合に,「AやBなどの」とは書かない. 2つあるなら「AとBの」の様に断定的な表現を使う.これとは反対に, 沢山の可能性の中の1つとしてAやBがある場合には「例えばAやBなどの」のように それ以外にも可能性があることがわかる表現を使う.
文章のねじれをなくす
主部の表現によって,使える述部の表現は限定される.例えば「○○のためには」 で始まる文であれば「○○でなければならない」「○○が必要である」などの表現が 述部で使われるはずである.「○○のためには」で始まる文が「○○が可能である」 などの文で終わることはない.主語と述語の対応関係も同様.例えば「本手法は」を 主語とする文の述語が「議論する(本来「我々は」など「人」が主語になるべき述語)」 などになることはない.

構成上の問題

話の筋を常に意識して書く
章の構成,章内の節の構成,節内の段落の構成の,全てにおいて,話の筋 (位置づけ・意図)を意識して書く.例えば起承転結のようなもの(厳密には違うが). 章の構成であれば例えば「研究の背景と目的を述べる章」「目的を達成する際の方針を 述べる章」「方針に従って行なった実験を紹介する章」「実験の結果を示す章」 「結果を考察する章」など.章の中の節の構成も同様.「問題を提起する節」 「解決の方針を示す節」など,全体における各章や節や段落の位置づけを意識した うえで,その意図に沿って文章を書く.
整理したうえで書く
話題が次々に出てくるような数珠繋ぎのような構成は避ける.例えばαという 話題の対象に対し,A,B,Cの3つの要素があるときに,「Aは○○でありαである, Bは○○でありαである,Cは○○でありαである」のような説明はしない (これだとあといくつ出てくるのか,また,どこまで読めば全部の話が終わるのか がわからない).
「αは下記の3種類に分類される.
  ・A
  ・B
  ・C
 Aは○○・・・」
のように整理してまとめて書くべき.
研究の実施順と論文の構成順序は別
実際に研究を行なったときの作業の順序や,自分がいろいろと考えたときの順序と, 論文の構成順序は別.仮にA,B,Cの順で実験をしたとして,Aが結論だったら それを中心に論文を構成する.a,b,cの順に考えて最終的にdの考えに 至ったとしても,dを中心に考察を構成する(a,b,c,dの順につなげた文章を 書くと,まわりくどく,主張のポイントも不明確になってしまう).
自問自答のような表現も避ける. 例えば「○○はどうだろうか?文献によると□□だそうだ.××と書かれている 文献もある.いずれにせよ……なのだから△△なのだろう」などの文は 「○○には□□と××と△△の考え方がある.本研究では○○を△△だと仮定する. なぜなら……」などのように再構成してやる.
論文は解説記事ではない
基本的には,論文は自分の主張を主軸にして書く. 自分の研究とは独立した形で一般的な概念の解説を延々と続けるような構成は (調査研究などを除き)よくない. 一般概念の解説が必要な場合でも,自分の研究とどう関係するのかを 常に意識しながら書くこと.例えば解説を始める前に自分の研究とこれから 行なう解説との関係についてコメントを入れるなど工夫も必要. 例えば「本研究では,○○をエージェントとしてみなす.そのため,この章では まず○○とエージェントの一般的な概念について説明し,その後で本研究との 関係について述べる.」など. 自分の研究と間接的には関係するが,直接関係はしない概念の詳細な説明などは, 付録にもっていく.その場合には,本文中ではその概要のみを説明し, 「詳細は付録○○を…」等のコメントを入れておく.
列挙の使い方
いくつかに分類できる項目をあげる際に,文章中で列挙の構造を使うことがある. おおまかに分類すると列挙は3種類に分類できる.
並列列挙
ある基準に従って整理した複数の項目を示す場合に使う.先頭には「・」などの 記号をつけ,字下げ(文の左端の位置を,本文の左端の位置よりも少し右にずらす) をするのが一般的.
順序つき列挙
作業手順など,各項目の順序に意味がある場合に使う.先頭には「1.」「(1)」 「1-1」などの通し番号を付与する.
定義型列挙
複数の項目について,それぞれ「項目名」とその「説明文」の組を並べて表記する. 先頭に記号をつけずに「項目名」をゴシック体等にして目立たせることが多い. 「項目名」を本文よりも少し字下げし,「説明文」はさらに広めに字下げする (例えばここでしている3つの列挙の説明は,定義型の列挙を使って記述している).
いくつかの項目を列挙する場合には,「分類の基準」を意識すること. 基本的には,「ひとつの基準」に基づいて分類した結果の「全ての項目」を列挙する. もし可能なら(あまりくどくならないようなら)列挙する前に分類の基準を示すと良い. また,何らかの理由があって全ての項目を挙げないのであれば,その理由や意図を 本文中で述べた方が良い.
例えば,「C言語の制御構造の種類」を基準とし,「逐次」「分岐」「反復」の 3つの要素に分類できるなら,この3つを列挙する. これを,「逐次」「分岐」「for文」「while文」のように4つに分類して列挙する のは妥当ではない.前半の二つは制御構造の種類としての分類であるのに対し, 後半の2つは制御命令の分類であり,分類の基準が異なっている.
図表の位置
図や表の位置は,基本的には本文で引用している部分に近い場所に置く. ただし,ページ構成上,本文の中間に図や表を入れることはあまりしない. たいていは図や表はページの上にまとめて記述し,本文と重ならないようにする.
     ○┌───┐  ×┌───┐  
       │□  □│    │…  …│  ページレイアウト上,左のようにすることが多い
       │…  …│    │…  □│  (□は図表,…は本文)
       │…  …│    │…  …│  右のようにすることはあまりない.
       └───┘    └───┘
図表が極端に大きい場合や,類似の実験データが膨大に存在する場合には, 図や表だけで構成するページを作り,そこにまとめて記載する方が良いこともある.

英語のアブストラクト

平易な文をつないで英文を作る.
まず,「述語」にあたる動詞を考え,次に,その動詞で使える文法 (「主語」「述語」「目的語」など)で構成される文章を考える (文法は「述語」にあたる「動詞」を辞書でひけば,たいがい用例と ともに載っている.単純に「主語」「述語」「目的語」の3単語を 考える(例えば「我々は」「システムを」「作った」→ We construct (the) system,など).最後に必要ならそれぞれを修飾する 語を文法にそって付与して文を作る. そのようにして作った文を,接続詞等でつないで文章にする.
日本語のアブストラクトを英単語に変換してはいけない.
日本語で書くと「主語」が省略されたり,動詞を名詞化したものに「する」 を付けて述語にしたり,いくつかの名詞を並べてひとつの意味にしたり することが多くある.これをそのまま英語にすると,何を言いたいのか わからなくなってしまう. 日本語のアブストラクトで「表現したい内容」を頭の中にイメージし, それを「主語」「述語」「目的語」で表現するように意識すると良い.
日本語:このデータの比較検証実験を行った.
悪い例:The comparison verification experiment of this data was done.
これでは何と何を比較して何を確かめたのかわからない.
このような場合,まず何を表現したいのか,言い換えれば,実験でやった ことをイメージするところからはじめる.
  1. 実験でやったことをイメージする.
    例えば比較検証の実験をしたのであれば,何を比較したのか,それによって 何が確かめられたのか,などをイメージする. 仮に比較したデータがAとB,確かめたことがCであったとする.
  2. 「主語」と「述語」を考え,使う動詞を考える. 「我々」がAとBを「比較」してCについて「検証」したのであるから, 主語は「We」が候補としてあがる.述語としては,例えば動詞の「compare」 と[verify]を使おうとまずは考えておく.
  3. 辞書を引いて使う動詞と文法を決める.
    辞書でこれらの動詞の使い方を調べると, 用例として「compare X and Y」「X is compared with Y」 「veryfy the result of xxx」「veryfy that xxx is xxx」などの例と その意味がわかる.また,それぞれのニュアンスの違い(compareで詳細に 比較するときにはwithが好まれる,など) や,他の単語との違い(compareは相対的価値を知るための比較,contrastは 違いを明確にするために対比させる比較)などの情報が得られる. これらをもとに,どの動詞をどの文法で使うかを決める.
  4. 文法にしたがって文章をつくる.
    「We compared A and B」「We veryfied C」
  5. つなげて文にする.
    文章間の関係と表現したい意図から,この文をアレンジして文章を作る.
    「We compared A and B. Then we veryfied C」
    「We compared A and B in order to verify C」など.
    (文法規則は高校で習うものでも十分.)
製作者 高橋 勇