3.代謝の調節を支える神経基盤
脳は、生体の恒常性の維持に深くかかわっています。その中でも、体のエネルギーバランスは絶妙にコントロールされています。この調節がうまく働かないと、飢餓、あるいは逆に肥満となり、糖尿病などの疾病の原因となります。脳と消化管や脂肪組織などがいかに協調して働くことにより、この絶妙なバランスが生み出されるのかについて、モデル動物を用いて調べています。
ボンベシン様ペプチドには、ガストリン放出ペプチド(GRP)とニューロメジンB(NMB)があり、脳や消化管において神経伝達物質として機能しています。これらのペプチドは細胞表面にあるGタンパク質共役型受容体に結合することにより、細胞内のセカンドメッセンジャー系を活性化し、機能を発現します。受容体として、GRP受容体(GRPR)、NMB受容体(NMBR)、そして内在性のリガンドは未知ですがこれらの受容体に分子構造がよく似た第3の受容体(BRS3)が知られています。ボンベシン様ペプチドは様々な生理機能の調節を担っており、摂食、消化機能、代謝、体温調節、恐怖記憶、ストレス応答、サーカディアンリズム、掻痒、生殖機能、脳の発生、癌細胞の増殖などに関与しています。そのため、その機能の発現を調節する機構を調べることは、関連する疾病の発症機構の理解や治療方法の開発にも重要です。
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