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研究内容

1.記憶・学習や社会性を支える神経基盤


鳥類のうちニワトリやウズラなどでは、卵から孵化した時点ですでに視覚・聴覚などの知覚系が発達しており、親鳥の姿を覚えて追従するというインプリンティング(刷り込み)行動がみられます。これは、幼少期における記憶・学習や社会性行動のすぐれたモデルです。私たちは、液晶画面に映した動く図形をヒヨコに刷り込むことができました。この実験系を用いて、幼少期における記憶・学習・社会性の形成や保持の基盤となる神経回路や、それを支える個々の神経細胞活動性の可塑的変化を明らかにするために研究を行っています。方法としては、行動学・生理学・形態学・分子生物学的手法を駆使しています。発生初期の鳥類胚は、脳の部分的な除去や移植、遺伝子の導入ができるので、鳥類は行動と神経系の発達を解析していく上で、非常に有用な材料となっています。


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2.脳と行動の性分化を支える神経基盤


出生前後の時期に、雄型(あるいは雌型)の生殖腺から脳へと性ホルモンが作用するかどうかによって、雄型脳か雌型脳かの枠組みが決まり、これにより性成熟後の雌雄では性ホルモンに対して異なる応答性を示します。この仕組みにより、雌雄での脳の働きの違いが生み出されます。ところが、この仕組みだけでは説明できない現象もあり、もともとの脳の性に従った性分化機構も働いているのです。この機構についてはあまりよくわかっていません。そこで私たちは、生殖腺ホルモン依存性、あるいは非依存性の性分化の両方のメカニズムを解明することを目的として、研究を行っています。このために雌雄のニワトリ胚間で脳の移植を行って脳と体の性が異なるモデル動物(ニワトリ)を作製し、行動や生殖機能、脳の形態、さらには遺伝子発現などについて調べています。さらに、遺伝子導入の方法を用いて様々な遺伝子を活性化、あるいは不活性化することで、これらの遺伝子の性分化における役割を明らかにすることをめざしています。

→プレスリリース参照 http://www.kitasato.ac.jp/new_news/n20121227.html



3.代謝の調節を支える神経基盤


脳は、生体の恒常性の維持に深くかかわっています。その中でも、体のエネルギーバランスは絶妙にコントロールされています。この調節がうまく働かないと、飢餓、あるいは逆に肥満となり、糖尿病などの疾病の原因となります。脳と消化管や脂肪組織などがいかに協調して働くことにより、この絶妙なバランスが生み出されるのかについて、モデル動物を用いて調べています。

ボンベシン様ペプチドには、ガストリン放出ペプチド(GRP)とニューロメジンB(NMB)があり、脳や消化管において神経伝達物質として機能しています。これらのペプチドは細胞表面にあるGタンパク質共役型受容体に結合することにより、細胞内のセカンドメッセンジャー系を活性化し、機能を発現します。受容体として、GRP受容体(GRPR)、NMB受容体(NMBR)、そして内在性のリガンドは未知ですがこれらの受容体に分子構造がよく似た第3の受容体(BRS3)が知られています。ボンベシン様ペプチドは様々な生理機能の調節を担っており、摂食、消化機能、代謝、体温調節、恐怖記憶、ストレス応答、サーカディアンリズム、掻痒、生殖機能、脳の発生、癌細胞の増殖などに関与しています。そのため、その機能の発現を調節する機構を調べることは、関連する疾病の発症機構の理解や治療方法の開発にも重要です。


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