イモリを用いた原腸胚形成のしくみに関する研究



アカハライモリの成体 アカハライモリの初期胚

 両生類のアカハライモリ Cynops pyrrhogaster の胚を用い、原腸胚における細胞運動機構についての研究を行っています。

 原腸胚は動物界全体に共通した非常に保存性の高い発生段階です。この時期に原腸陥入などのダイナミックな細胞運動を行い、3胚葉(外胚葉、中胚葉、内胚葉)が決定します。原腸胚期は非常に重要な時期にも関わらず、この時期の細胞運動の原動力となっている機構については不明な点がたくさんあります。

 アカハライモリの胚は、両生類のモデル生物であるアフリカツメガエル Xenopus laevis よりもサイズが大きく、より単純な構造をしており、さらに初期発生のスピードが遅いという特徴をもっています。そのため、いくつもの運動が複雑に絡まり合う原腸陥入という現象を調べるうえで非常に有利です。

 現在、原腸陥入時の細胞運動の原動力として内胚葉細胞の運動に注目し、原腸陥入における細胞内 Ca2+ 動員に着目した実験を行っています。イモリ原腸胚から単離した内胚葉細胞はアメーバ運動をすることが知られており(Holtfreter, 1948)、我々のこれまでの実験により、細胞運動に伴う細胞表面の波打ち運動に沿ってCa2+ の局在があることが分かっています。

 小胞体から細胞質へのCa2+放出機構には主として2つの経路が知られています。IP3レセプター経路とリアノジンレセプター経路です。現在、これらの経路に関する阻害剤を用いて、細胞運動においてどちらの経路がどのように働いているかについて実験を行っています。


2016.01.20