モンシロチョウ

Pieris rapae crucivara Boisduval

 シロチョウ科に属するモンシロチョウは,日本全土に普通に見られるおなじみのチョウです.アオムシと呼ばれる緑色の幼虫はキャベツが大好物ですが,アブラナ科全般を食草とします. 成虫は暖地では年6~7回,寒冷地では年2~3回発生し,蛹の状態で越冬します.
顕微鏡下で観察したモンシロチョウの翅.鱗粉が規則正しく並んでいる.クリックすると別ウィンドウで拡大
 ひらひらと飛んでいるモンシロチョウのオスとメスは一見似かよっていますが,両者の表翅をよく観察するとオス翅は全体に白っぽく,マットな感じがします.一方,メス翅は黄色や黒い部分が多く,白さの感じも違います.これらの色彩は翅の1枚1枚の鱗粉により作り上げられています.
 古くから,シロチョウ科のチョウの特徴として,たくさんのプテリジンが翅の鱗粉に蓄積していることが知られています.プテリジンはメラニンやオモクロームとともに昆虫の多様な色彩発現に関係する重要な色素です.これらの色素は,昆虫ホルモンの支配下にある脱皮・変態に伴い互いに何らかの相互作用を持ちながら合成されていると考えられます.一方,メラニン色素しか蓄積しないヒトの場合は,還元型のプテリジンが芳香族アミノ酸水酸化反応やNO合成などの補酵素活性を持つという生理機能が重要視されています.
蛍光顕微鏡で観察したモンシロチョウの鱗粉
 地球上の全動物種の7割以上を占める昆虫類は多様な生活史戦略によりさまざまな環境の変化に適応し,著しい種の分化を重ねてきました.昆虫はさまざまな体色発現により,保護色や警戒色あるいは擬態という自然選択と強く関わる生物現象を示しています.
 我々のグル-プは,このような昆虫の体色発現における色素の生合成や生理機能との関係,あるいは色素顆粒形成などについて,プテリジンやオモクロームを中心に分子レベルでの理解を目指し研究をすすめています.