表計算の課題


講義中に使用した関数だけを使用すること.
新しい関数を使用したものは,「自由研究」として,課題に付け加えておけば,多少加点する.


ローン金利

金融機関から借金をした場合の返済をシミュレートしてみる. 返済方法は元利均等方式(毎月の返済額が一定となる返済方法)とする.

毎月の返済額は以下の式で計算される.ここで,$X^Y$(XのY乗)は X^Y と入力する.

\[ \mbox{毎月返済額} = \frac{rS(1+r)^n}{(1+r)^n - 1} \]

元金:$S$
実際に借りた金額
月利(割合):$r$
月あたりの金利: 年利$\div$12 で計算
返済回数:$n$
今回の場合は返済に掛かる月数

問題

借り入れ元金が3000万円,年利3.0%,借り入れ期間30年の住宅ローンを考える.

毎月の元金返済額,毎月の利息(他に計算に必要な項目は自分で作る)を表にし,それを元に横軸を期間,縦軸を金額として,

のそれぞれについて両者の関係が良くわかるように,それぞれ1つのグラフに書きなさい.

ここで,月々の元金返済額,利息は,次のように計算される.

今月の利息 = 前月の元金残高 × 月利
今月の元金返済額 = 毎月の返済額 ‐ 今月の利息

グラフに使用する表は,異なる元金や年利でも同様の計算が簡単にできるように以下のような表を作り,この表に数値を入力するだけで,自動的に再計算されるようにすること.

元金年利(%)期間(年)毎月返済額支払総額
300000003.030

研究

今回のような借金の金利は,借金した時点での金利に固定されるが,近年のように,金利の変動が激しい場合は,手数料を払っても「借り換え」をしたほうが支払総額が少なく出来ることがある.

例えば,今回の場合に15年目の時,借り換えをするとして,金利がどの位に変化すれば得になるか考えてみる.ただし,借り換えには,新規元金の 2.1% の手数料と年利に +0.2% の保証料が掛かるとする.

借り換えとは,最初の借金の返却の途中で,元金の残金を新たに借金をして一括返済し,残りの期間は新たな借金に対する返済を行うようにすること.借り換えには一般に手数料と保証料が発生するが,金利が最初の借金の時に比べて低くなっている場合は支払総額が少なくなる場合がある.


生態系

一般に生物の個体数は,環境が安定していれば世代ごとに一定の割合で増加し,個体数が多くなりすぎれば減少する. 減少する割合は,その時の個体数に比例すると考えることができるので,世代ごとの個体数は以下のような式によって求められる.

$n$世代の個体数を$x_n$,増加率を$a$,減少率を$bx_n$とすれば \[ x_{n+1} = ax_n - bx_n^2 = ax_n\left(1 - \frac{b}{a}x_n\right) \] 両辺に$\frac{b}{a}$をかけて, \[ \frac{b}{a}x_{n+1} = a\frac{b}{a}x_n\left(1 - \frac{b}{a}x_n\right) \] $X_n = \frac{b}{a}x_n$と置き換えると, \[ X_{n+1} = aX_n\left(1 - X_n\right) \]

以上のように,$X_n$は生物の個体数そのものではないが,生物の個体数と同じように変動する数値であることが分かる.

問題1

  1. 最初の$X$の値$ X_0 (0 \le X_0 \le 1)$と$ a (1 \le a \le 4)$の値を決めて,100世代分の変化を表にし,横軸を世代,縦軸を$X$としたグラフにする.
  2. いくつかの異なる$a$の値で同様の計算をし,グラフを書く.どのような違いが生じるか調べてみる.

問題2

生物種がA,Bの2種類あり,それらがA植物とB草食動物のような関係にある場合,個体数の変化がどうなるか考えてみる. 今回は,世代数ではなく時間(年)による変動を考える(違いは何もない).

$n$年目のAの個体数$x_n$,Bの個体数$y_n$とし,それらの変動を表す係数を次のように考える.

Aの個体数は,安定した環境では一定の割合で増加し,前年の個体数に比例して 減少する(自然死).また,AはBに食べられるので,Bの個体数に比例して減少する.
Bの個体数は,食物である前年のAの個体数に比例して増加し,自身の個体数に比例して減少する.

Aの増加率Aの自然減少率の係数AがBに食われる割合Bの増加率の係数Bの自然減少率の係数
$a$$b$$c$$d$$e$

以上の設定で,$n+1$年目の個体数を考えると,次のような式に従って変動すると考えられる.

\[ x_{n+1} = ax_n - bx_n^2 - cx_ny_n \] \[ y_{n+1} = y_n + dx_ny_n - ey_n^2 \]

最初のA,Bの個体数は自分で決め,$a,b,c,d,e$の値を様々に設定し,100年後に2つの生物種が生 き残っているようにし,横軸を年数,縦軸を個体数としたグラフを書きなさい.Xの2乗は,X^2と入力する.
定数は別に表にしておくと良い.

ヒント:

まず $a$ と $b$ の値だけ設定(ほかは0)し,生物種Aの個体数が安定するようにする($b$の値は$\frac{1}{x_0}$ぐらいの値).
その後,他の定数を順番に設定してゆく.

研究

植物A,草食動物B,肉食動物Cの3つの生物種がいて,CはBを,BはAを食べることによって生存してい る.それぞれの個体数の変化を調べる.100年後に全て生き残らせるためには係数をどう設定すればよいか.


復活の日

伝染病の感染者数が,どのように変化していくかを考えてみる.

問題1:単純な感染

最初は,あまり現実的な設定をしないで考えます.

  1. 「最初に感染した人数」,「接触人数(一人の人が一日に出会う人の人数)」,「感染率(感染者が,接触した人に感染させる割合)」を設定し,一日ごとの新規感染者数と総感染者数を計算させ, 3ヶ月分の毎日の変化をあらわす表を作る.
  2. 横軸を日数,縦軸を感染者数としたグラフを作る.
  3. 感染率を変えたり,感染対策対策として接触人数を減らして計算し,様々な場合で違いを比べてみましょう.

問題2:有限の人口,自然免疫,回復者

現実には人口は有限なので,感染者が増加すれば接触者の未感染者数が減少する.また,発症期間が過ぎれば感染者は回復する.これらの影響を取り入れる.

  1. 人口は有限であるので,その影響を考える.
    感染率は未感染者と接触した場合の値であり,既に感染しているものは接触しても感染しない.したがって,接触人数は未感染者との接触に限定する必要がある.
    ヒント:総人口が有限の場合接触者が未感染である割合は$\frac{\mbox{総人口}-\mbox{感染者数}}{\mbox{総人口}}$
  2. 自然免疫の影響を考える.
    感染者は発症期間が終われば回復して感染者ではなくなる.また,回復者は免疫を持っているので再感染しない.
    ヒント:発症期間を設定し,期間が過ぎた感染者は除く.接触者の未感染率を計算するときは累積の感染者数を使用する.
  3. 再感染を考える.
    ウィルスが変化した場合は,一度感染して回復した場合でも再び感染する.

研究

少し現実的な設定として,「潜伏期間(感染して発病するまでの日数)」,「発症期間(発病して入院するまでの日数)」この期間に人に感染させる,「隔離期間(入院して回復するまでの日数)」を計算に加えてみましょう.


真夏の方程式

質量$m$の物体を初速$v_0$,角度$\theta$に打ち出した時,物体はどのように何処まで飛んでゆくか考えてみる.

ある時刻の位置の$x$座標を$x(t)$,速度を$v_x(t)$とすると, 速度$v_x$の定義から,$\Delta t$秒後の$x$座標は次のように求められる. \[ x(t + \Delta t) = x(t) + v_x(t) \Delta t \]

また,時刻$t$における加速度$a_x(t)$から,$\Delta t$秒後の速度$v_x(t + \Delta t)$を求めることができる.

\[ v_x(t + \Delta t) = v_x(t) + a_x(t)\Delta t \]

ここで,ニュートンの運動方程式,$ma_x = F_x$から,時刻$t$における加速度は, \[ a_x(t) = \frac{F_x(t)}{m} \] よって, \[ v_x(t + \Delta t) = v_x(t) + \frac{F_x(t)}{m}\Delta t \] と求められる.

このようにして$\Delta t$秒ごとの位置と速度を必要なだけ求めていく.

同様にして,$y$座標の計算をし,これを繰り返してゆけば,$\Delta t$秒ごとの物体の位置$(x,y)$が求まるので,これを散布図にすれば,物体の軌道が求められる.

問題1

重力のみが作用する場合の運動をグラフにする.

ヒント

重力加速度を$g$とすると, $F_x = 0$,$F_y = -mg$.

最初の位置を$(x_0,y_0)$から初速$v_0$で 角度$\theta$で打ち出したので,最初の速度の成分は,$v_{x} = v_0\cos\theta$,$v_{y} = v_0\sin\theta$

問題2

初速度を一定にし,打ち出す角度を様々に変えた時,落下位置までの水平距離($x$座標)がどのように変化するか計算し,グラフにする.

研究

  1. 速度に比例する空気抵抗がある場合.
    ヒント:
    作用する力は,抵抗係数を$\beta$とすると $F_x = - \beta v_x$,$F_y = -mg - \beta v_y$
  2. 大きな物体や,速い物体に働く空気抵抗は速度の2乗に比例する.この場合はどうなるか.
    ヒント
    作用する力は,抵抗係数を$\beta$とすると $F_x = - \beta \sqrt{v_x^2+v_y^2}\ v_x$,$F_y = - mg - \beta \sqrt{v_x^2+v_y^2}\ v_y$

振動

バネ定数 $k$ のバネの先に付けた,質量 $m$ の錘の運動は,抵抗や摩擦がなければ単振動という運動をする.時刻$t$における自然長(バネの元々の長さ)を基準とした錘の位置 $x$ は次の式で表される.

\[ x(t) = \alpha \sin{(\omega t + \phi)} \]

ここで,$\alpha$:振幅, $\omega = \sqrt{\frac{k}{m}}$:角振動数,$\phi$:初期位相は,振動の特徴を表す.

単振動に空気や水の抵抗を考えると,条件によって3種類の運動が生じる.抵抗の影響を表す係数を$\gamma$とすると次のように表される.

$\gamma > \omega$の場合:過減衰
\[ x(t) = \exp{(-\gamma t)\left[A\exp{\left(\sqrt{\gamma^2 - \omega^2}t\right)}+B\exp{\left(-\sqrt{\gamma^2 - \omega^2}t\right)}\right]} \]
$\gamma = \omega$の場合:臨界減衰
\[ x(t) = (At+B)\exp{(-\gamma t)} \]
$\gamma < \omega$の場合:減衰振動
\[ x(t) = \alpha\exp{(-\gamma t)}\sin{\left(\sqrt{\omega^2-\gamma^2}t+\phi \right)} \]

$A$,$B$,$\alpha$,$\phi$は最初の位置や速度に関係する定数.

減衰振動に外から周期的な力($F = mC\cos{(\Omega t)}$)を加えた場合を考える.こういった運動は強制振動と呼ばれ,錘の運動は次の式で表される.

\[ x(t) = \alpha\exp{(-\gamma t)}\sin{\left(\sqrt{\omega^2-\gamma^2}\,t + \phi \right)} + \frac{C\cos{\left(\Omega t- \Phi\right)}}{\sqrt{(\Omega^2-\omega^2)^2+(2\gamma\Omega)^2}} \] \[ \Phi = \arctan{\left(\frac{2\gamma\Omega}{\Omega^2-\omega^2}\right)} \]

ここで以下の量は定数である.
$\gamma$(抵抗の大きさに関係), $\omega(>\gamma)$(固有の揺れ方に関係), $\Omega$(外部からの揺らし方に関係),$\alpha, \phi$(最初の位置や速度に関係),$C$(外部からの力の大きさに関係)

arctanという関数はExcelではATANという名前で登録されている.

ブランコを押したときの運動や,ビルなどの建物(ある種の振り子と考えられる)が地震に襲われたときの揺れ方のモデルになる.

問題

  1. 単振動,過減衰,臨界減衰,減衰振動,強制振動のグラフを書く.この時,定数は別に表にしておき,値を適当に設定して時間と位置の表を作り,横軸 $t$,縦軸 $x$ としてグラフにする.ただし,$t$ の間隔はグラフが滑らかになるように取ること.
  2. 強制振動において,$\Omega$ 以外の定数は上で設定したもの( $t$ も適当な値を設定)として $\Omega$ と $x$ の表を作り($\Omega$ の範囲は,$\omega$ の値を含むように取ること),$\Omega$ を横軸,$x$ を縦軸にとったグラフを書け.ただし,$\Omega$ の間隔はグラフが滑らかになるように取ること.

研究

問題2の場合,$\Omega$が特定の値のとき$x$が非常に大きく変動するはずである.どの位の値の時か調べよ.


地球温暖化

大気中の二酸化炭素濃度の上昇によって,地球の温室効果が高まり,気候が温暖化しているといわれている.はたして本当にそうなのか大気中の二酸化炭素濃度のデータと地球の表面温度のデータに関係があるかどうか調べてみる.2つのデータの関係は次の「相関係数」で調べる.

相関係数の計算

X,Y 2つのデータ間の関係を「相関」といい,統計学的には次のような「相関係数」でその関係の強さが表される.

相関係数 = (XYの偏差積の平均)÷(Xの標準偏差×Yの標準偏差)

ここで,

XYの偏差積 = (Xの偏差) × (Yの偏差)

偏差 = (データのそれぞれの値) ー (データの平均値)

である.

この相関係数が「+」のとき「正の相関(同じ傾向)」があり「ー」のときは「負の相関(逆の傾向)」があるという.また,その値によって次のように表現される.

係数の値表現
±0.7〜±1強い相関がある
±0.4〜±0.7中程度の相関がある
±0.2〜±0.4弱い相関がある
±0〜±0.2ほとんど相関がない

問題1

  1. 次の2つのデータをダウンロードする.
    二酸化炭素のデータ
    気温のデータ
  2. これらのデータを表計算ソフトで開く.
  3. 表示されたデータを課題用のファイルにコピーし,元のデータファイルは閉じる.
  4. 気温データの方は,年平均気温を計算しておく.
  5. 年代,二酸化炭素濃度,年平均気温をまとめて,ひとつの表にする.
  6. 二酸化炭素濃度に対する年平均気温の変動を表すグラフ(XY散布図)を書いてみる.
  7. 二酸化炭素濃度と年平均気温の相関係数を計算する.これらには相関関係があるか?

問題2

インターネットなどから,温暖化の原因と考えられる二酸化炭素以外の気体のデータを探して,年平均気温のデータの相関を調べよ.

研究

インターネットなどから,世界各地の二酸化炭素量のデータと平均気温のデータを探し,それらの平均を求めて二酸化炭素量と平均気温の相関を調べよ.

参考:気象庁|各種データ・資料|地球環境・気候


試験の採点

ある科目の前期の採点結果が次のようになったとする.この結果を基にして成績をつけるとする.
採点データファイル(ダウンロードして使用する)

まず,以下のような条件に従って各学生の得点を計算する.

  1. 試験の得点を85点満点として計算する.
  2. レポートは
    S: 6点、A:5点、B:4点、C:3点、D:2点、E:1点、F:0点
    として計算する.
  3. 以上の得点を合計したものを評点とする.但し,100点を越えた場合は100点とする.
    また、以上の得点を合計しても60点に満たない場合は,小テストの合計点を20点満点として計算し,これを前項までの合計点に加えたものが60点を超える場合は評点を60点とする.
  4. 以上の評点をもとにして、
    90点以上:秀、80点以上90点未満:優、70点以上80点未満:良、60点以上70点未満:可、60点未満:不可
    とする。
  5. また、10点ごとの人数を計算し度数分布表を作り,グラフにしてみる.(ヒント:COUNTIFSを使うと楽かも)

研究

診療報酬の計算の仕方を調べ,各項目にデータを入力すると金額が自動的に表示されるものを作る.
完璧なものを作るのは複雑なので難しいかもしれません.まずは単純な項目だけのものを作ってみましょう.


日本の人口と生産力

次のような日本の人口と生産力のデータがある.この結果を基にして様々な特徴を調べてみる.
都道府県の人口と面積(ダウンロードし,自分のブックにコピーして使用する,人口は年代ごとにシートが分かれています)
都道府県の経済(ダウンロードし,自分のブックにコピーして使用する)

問題1

データをもとに以下の情報を解析する.

  1. データに「地方区分」を追加する.(北海道,東北,関東,中部,近畿,中国,四国,九州)
  2. 各県の全人口の全年度を通じた平均値を求め,各地方ごとに,それが最も大きい県,小さい県を表示する(データベースから指定された条件を満たす値を抽出する場合,DGET関数を使用します.)
  3. 各県の人口密度の全年度を通じた平均値を求め,各地方ごとに,それが最も大きい県,小さい県を表示する.
  4. 各県の10年ごとの人口増加率を求め,地方ごとにその全年度を通じた平均値が,最も大きい県,小さい県を表示する.
  5. 各地方の各世代の10年ごとの人口増加率を求め,地方ごとにその時間変化をグラフ化する.
  6. 各県の10年ごとの若年人口の増加率を求め,地方ごとにそれが大きい県,小さい県を求め,その時間変動を調べる,
  7. 各県の10年ごとの老年人口の増加率が求め,地方ごとにそれが大きい県,小さい県を求め,その時間変動を調べる.

問題2

データをもとに以下の情報を解析する.

  1. 地方ごとで,一人あたりの生産力の平均が,最も高い県,低い県.
  2. 各県の生産の特徴を調べる.最も生産額に対する割合が高い産業,低い産業の変動
  3. 各県の,第1次産業,第2次産業,第3次産業の占める割合の変動
  4. 地方ごとで,第1次産業(農業,林業,水産業)の各生産力の最も大きい県の変動
  5. 地方ごとで,第2次産業の各生産力の最も大きい県の変動
  6. 地方ごとで,第3次産業の各生産力の最も大きい県の変動
  7. 地方ごとで,生産者人口一人あたりの生産力の変動とその平均が,最も高い県,低い県.

研究

他のデータを各自探し,データをもとに各県の特徴を解析する.



課題の提出方法


以下のようにして提出して下さい.

提出前に確認しておくこと:
ファイルを自宅などに送って作業した場合(特に異る表計算ソフトを使用した場合)や別の場所にコピーなどした場合に,やり方によってはセルに入力した数式が計算結果の数値に変換されている場合があります.数式が入力されていない場合は評価されないので確認してください.


課題のファイル名は「学籍番号-kadai.xlsx」とし,練習問題のファイルと同様に,学生用サーバー(stu.clas.kitasato-u.ac.jp)上の各自の提出場所に提出してください.


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